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【検索用 きれいなはなにみすをさす 登録タグ TeaSoda VOCALOID あの高橋。 き ニコニコ外公開曲 初音ミク 曲 曲か 鏡音リン】 + 目次 目次 曲紹介 歌詞 コメント 作詞:あの高橋。 作曲:あの高橋。 編曲:あの高橋。 イラスト:TeaSoda(Twitter) 唄:鏡音リン・初音ミク 曲紹介 曲名:『綺麗な花に水を刺す。』(きれいなはなにみずをさす) あの高橋。氏のVOCALOIDオリジナル曲2作目。 歌詞 (動画概要欄より転載) 綺麗な花に水を刺し殺して 病まない雨溢れて枯れて行く 零れ堕ちた血にばかり愛を嘆く 苦しくて鳴いた哀は意訳され 戦場に投げ出され死んでいく 見えない銃にただ怯えながら 日常に憂う 壊れてしまったら また直せばいいと 少しずつ僕等は 形を変えていく 歪なまま無理矢理に重ねては 消える 嫌いな歌ばかりが流れて来て 愛したはずの日々が潰えて 零れ堕ちた涙に理由を問った 苦しくて逃げた愛に囚われて 背を向けて心臓を捧げて 見えない銃に命を乞った どこで掛け違えたんだろう 今も日常に憂う ハッピーエンドには 皆飽きたみたいだ 生み出されるものは 死ばかりが溢れた 所詮はフィクションと 無駄に使われた 小さい命にも 価値を求めてた 歪なまま また重ねて お悔みを申し上げる気はないし ご冥福を祈りもしないが 君が生きた日々をずっと忘れない 天国を信じて堕ちて逝くなら きっと幸せだろうなんてさ 消せない疑心から目を背けた きっと僕もいつかは 君の傍に行くだろう 止まった時計の針が 僕を貫くまで コメント 名前 コメント
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620 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2008/04/15(火) 20 03 35 ID ??? 確実に殺さないと腕一本から致死級の反撃してくるうちの鳥取は死体はミンチにして焼却が基本。 灰は十里四方に引き離しましせう。 621 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2008/04/15(火) 20 10 34 ID ??? 620 大活劇で敵の首を落として安心していたら 敵の死体が毒爪つきの腕で反撃して足を刺されるとかね、もう(ry GMの近頃の読書傾向に気を配るべきであった。 何回も念入りにとどめを刺す仕事人カコワルイ スレ169
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「黒ひげの樽に短剣を刺すこと」 小説用偽名太郎 姉ちゃんが樽に短剣を刺すと、樽の中から黒ひげが飛び出した。黒ひげはそのままコタツの上から落ちて、床を転がっていった。 「あーあ。負けちゃった」姉ちゃんはそう言うと、後ろ向きに倒れ込んだ。そのまま身体を横にして寝る体勢になっている。 「ねえ。黒ひげ拾ってよ」 「えー、なんであたしが」 「黒ひげを出したのは姉ちゃんだろ」 「嫌よ、コタツから出たくない、寒いのは嫌」姉ちゃんはそう言って寝転がったまま動こうとしない。僕はため息をつく。 「そもそもあたし達はどうしてこんなゲームをやっていたのかしら。黒ひげを樽から出したら負けなら最初から短剣を刺さなければ良かったのよ。そうすれば誰も敗者にならなくてすむわ」 「それじゃあ黒ひげはずっと樽に入れられたままじゃないか」 「何が悪いの? 黒ひげは海賊で、悪者なんだから。樽の中に閉じ込められたままなら悪さができなくて安全よ」 僕は何か言い返そうとしたが言葉に詰まった。確かに姉ちゃんの言う通りかもしれない。僕たちは何を目的に短剣を刺していたのだろう。黒ひげが樽から出てきたら負けなのに。短剣を刺さなければ、出てこないのに。なんだかよくわからなくなる。 「まあ黒ひげだってせっかく樽から脱出できたのにすぐ樽に戻すのは可哀想でしょうよ」姉ちゃんは、話は終わりだと言わんばかりに目をつぶって眠ろうとする。 僕は少しむっとしたので、「屁理屈は良いからさっさと拾え」と言ってコタツの中の足を蹴ってやった。「ちょっと、やめてよ」と姉ちゃんは言うが、一向にコタツから出ようとしないから蹴り続けてやる。 それでも起き上がりもせず「ああ。樽の中の黒ひげもこんな気分で短剣を刺されていたのかしら」なんて言うから、僕は呆れて蹴るのを止めた。そのまま姉ちゃんと同じ様に寝転がる。 視線の先に黒ひげが転がっていた。なんとなく「君は樽から脱出できて嬉しかったのかい?」と心の中で聞いてみたが答えはどこからも返ってこない。 僕はそのままコタツの中で眠ってしまった。 (822字)
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【検索用 かなふんのせなかにはりをさすんた 登録タグ VOCALOID suragi v flower か 曲】 + 目次 目次 曲紹介 歌詞 コメント 作詞:suragi 作曲:suragi 編曲:suragi 唄:v flower 曲紹介 曲名:『カナブンの背中に針を刺すんだ』(かなぶんのせなかにはりをさすんだ) suragi氏の11作目。 終始狂気的な歌詞が続くが、謎の中毒性がある楽曲。 suragi氏はこの曲で、「かなぶんP」や「ガチサイコP」というP名を提案されている。 ネタ曲投稿祭2021秋参加曲。 歌詞 (動画概要欄より転載) いつだったか家の玄関に カナブンがよそよそと歩いていたんだ 踏みつけてしまおうかと思ったけど あることをひらめいて部屋に持ち帰りました 紙の上に置きました 机が汚れるのが嫌だった 裁縫セットの中から 大量の針を取り出した! カナブンの背中に針を刺すんだ 1本2本3本刺したら動かなくなった あまりにも強く刺したので カナブンの脚が取れてしまいました 生きてるかも怪しいその体から 溢れ出た液体が紙の色を変えていた 動かないままの体 何分かずっと観察していた 針が残っていたので どれだけ刺せるか試そうか! カナブンの背中に針を刺すんだ 十本100本1000本刺したら原型すらもなくなってたんだ コメント 名前 コメント
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トップページ イベント攻略 [部分編集] 報酬 勝利回数 1 10 20 30 40 50 60 Normal インゴット x5 資材20%ブースト 10分 x1 Hard インゴット x10 標的設計図(潜水) x150 ★5 53cm艦首酸素魚雷 x1 VeryHard【壱】 インゴット x15 資材20%ブースト 20分 x1 標的設計図(潜水) x300 ★5 訓練教官 x1 VeryHard【弐】 インゴット x20 雷撃術・初級 x400 標的設計図(潜水) x300 雷撃術・中級 x200 ★5 53cm艦首酸素魚雷-改 x1 VeryHard【参】 インゴット x25 標的設計図(戦艦) x300 標的設計図(戦艦) x450 ★5 訓練教官 x3 雷撃術・上級 x40 ★5 123A型A・ソナー改 x1 VeryHard【肆】 インゴット x30 ★5 パーツ改造キット x3 生産バーナー x5 重油全補給物資 x2 ★5 訓練教官 x4 ★5 パーツ改造キット x5 標的設計図(駆逐) x750 EXTREME ★5 高性能化素材(駆逐) x1 [部分編集] VeryHard【参】の編成 敵戦力:25898 陣形:単横陣 重油消費:25 時間・天候:昼・晴 敵構成 : 潜水、駆逐、駆逐、駆逐、駆逐、駆逐 敵旗艦技 : 正射必中の極意4(命中 20%) 敵駆逐戦技 : 爆雷広域散布5 技能 : 敵潜水戦技 : 雷兵の術中 技能 : 未分類技能 : 速力上昇3 VeryHard【肆】の編成 敵戦力:39848 陣形:輪形陣 重油消費:30 時間・天候:昼・晴 敵構成 : 潜水、戦艦、重巡、軽巡、軽巡、軽巡 敵旗艦技 : 無敵の耐久力2(HP +10%) 敵戦艦戦技 : 技能 : 敵重巡戦技 : 極限の操艦 技能 : 敵軽巡戦技 : 撹乱魚雷斉射、 技能 : 敵潜水戦技 : 潜特型ノ奇襲、ツタンカーメン、対鎧鯨戦術 技能 : 未分類技能 : 戦技発動上昇5 x4、雷撃上昇3 x2、対潜上昇3 EXTREMEの編成 敵戦力:69460 陣形:輪形陣 重油消費:35 時間・天候:昼・晴 敵構成 : 潜水、戦艦、重巡、軽巡、軽巡、軽巡 敵旗艦技 : 無敵の耐久力2(HP +10%) 敵戦艦戦技 : バレットライン、沈まぬ鉄血 技能 : 敵重巡戦技 : 戦意高揚、極限の操艦、反攻射撃3 技能 : 敵軽巡戦技 : 撹乱魚雷斉射 x3、無数の雷牙 x3 技能 : 敵潜水戦技 : 潜特型ノ奇襲、ツタンカーメン、対鎧鯨戦術 技能 : 未分類技能 : 戦技発動上昇5 x5、全会心上昇3 ↓コメント等 名前 閲覧数 今日: - 昨日: - 合計: -
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豪奢な別荘だった。 『別荘』というより、ひとつの『屋敷』と言った方が正しい。 それも、エドガー・アラン・ポーの『アッシャー家の崩壊』に登場するような、蕭然とした洋館だった。 その隣にわざわざ建設されたワイン蔵に、一人の参加者が隠れていた。 その中は、貯蔵されたワインの酸味と冷やかな湿気に包まれている。 窓がない貯蔵庫の性質上、灯りをつけても目立たないという意味で、『彼女』は幸運だったのだろう。 だからこそ、貯蔵庫の樽の上に座り、じっと居座るという行動ができたのだ。 封鎖されたワイン貯蔵庫の樽の上に座り込んで数十分。 彼女はその間、支給品の確認に没頭したっきり、何もしていなかった。 いや、心では色々な感情が渦を巻いていたのだが、行動らしい行動は何も起こしていなかった。 ただ、樽の上で小刻みに震えていた。 ◆ もう泣かないと約束してほしい。 あなたが泣いていると思ったら、わたしはどうしていいか分からないから。 もう、わたしはその涙をぬぐってあげることができないから。 風に踊る花びらの中を、旅立って行った人が言った。 だからぼくは約束をした。 もう泣かないと。 次に会う時は、ぼくがあなたの涙をふけるようになっていると。 その時のぼくは、ぼろぼろに泣いていて、説得力も何もなかったけれど。 ましてや、『殺し合い』なんてものに巻き込まれるなど、想像もしていなかったけれど。 それでも、その日からぼくは少しだけ強くなり、何があろうとも下を向かない人間になった。 ……もちろん、『生き残れるのは一人だけ』と言われて、しかも女の子が殺されるのを見せられて、動揺を抑えることはできなかったけど。 でも、それを許容するつもりにはなれなかった。 ぼくは、絶対に生きて帰る。 何故なら、死ぬわけにはいかないからだ。 ぼくはまだ夢を叶えていない。 『作家』という狭き門をくぐって、その先に行くという夢。 万人の作家になって、いつかその人と再会を果たすという夢。 そして、ぼくと約束をしたその人も、この『実験』の中にいる。 だからぼくは、死なない。 何が起こっているのかなど理解できないけれど、それでも、死ぬことだけはしない。 そして、死なせない。 いつか、再び会うと誓った人を死なせない。 ぼくはまだ、再会に値するほど強くなってはいないけれど、それでも、今ある限りの力で守りたい。 その人と死に別れてしまうなんて認めない。 だからぼくは、『最後の一人になる』という道を選ばない。 それに、この舞台にいるのは、ぼくたち二人だけじゃない。 ぼくの高校生活に大きな揺さぶりを与えた三人の人間も、この『実験』に参加させられていた。 櫻井流人。竹田千愛。琴吹ななせ。 三人とも、決して殺し合いなんてできないだろう。 強いて言えば、流人君には少々脆いところがあったけれど、それは既に過去のことだ。 以前の流人君には、遠子先輩の為なら暴走しかねないような危ういところがあった。 しかし、それはもう終わったこと。 今の彼は、遠子先輩を守らねばという強迫観念から解放されている。 何より、ここにはたった1人の恋人である竹田さんもいる。 遠子先輩か竹田さんのどちらかと、流人君が切り捨てるような展開はまずあり得ない。 よって、彼は殺し合いなどをしたりしない。 竹田さんにとってもそれは同じだ。 流人君が危うかった時期の竹田さんなら、まだ暴走する危険があった。 けれど、今の竹田千愛は、『櫻井流人とずっと共に生きて行く』ことを決めている。 その決意は固い。彼女もまた、自分か流人君か、どちらかしか生き残れない結末は拒否するだろう。 そして、琴吹さん。 彼女もまた、死なせたくない人だ。 恩人であり、ぼくが一番苦しかった時に支えてくれた人。 けれど、恋愛感情で答えてあげることができなかった人。 その一点で、ぼくは彼女と同じ道を歩けない。 要するに、合わせる顔がない。 もちろん、こんな状況で『顔を合わせづらいから』なんて理由で知り合いを放置するなど、愚かにもほどがある。 けれど……ぼくは遠子先輩が一番大事だけれど、それでも琴吹さんに死んでほしくない。 そう言ったら、彼女は怒るだろうか。 きっと怒るだろう。 だから、遠子先輩と琴吹さん、二人を秤にかける時が来るとしたら、迷わず遠子先輩を優先しよう。 ぼくが彼女にしてあげられる配慮は、それぐらいしかない。 だから、当面は遠子先輩との合流を最優先して動くことにしよう。 その上で目的地を決めることにする。 そうなると、やっぱり、E-8エリアの図書館が怪しかった。 遠子先輩は、本と本がある場所をこよなく愛している。 たとえ町に核兵器が打ち込まれたとしても、図書館に籠って本と一緒に心中しかねないような人だ。 今が命がけのサバイバルだろうとそんなの関係なく、図書館を目指すだろう。 そして、遠子先輩の本好きは、ここに呼ばれた皆が知っている。 だから皆も先輩自身も、『図書館に向かえば合流できる』と見越している線が強い。 地図によると、ぼくのスタート地点はA-5エリアの東部だった。 ここからだと、図書館に向かうにはB-5の別荘地からのびた車道を通るのが最短になる。 そういうわけでぼくは、目立たないように気をつけながら、別荘地の建物に沿うように歩いていた。 豪奢な屋敷は、夏休みに訪れた、姫倉家の怪談屋敷を想像させる。 ……そう言えば遠子先輩は、夜中に出歩くのを怖がるほどの怪談恐怖症だった。 『魔女の口づけ』というオカルトな単語から、いつもの妄想推理をして怖がっていないか、心配になる。 ――あれ? その違和感に気づけたのは、車道を目指して屋敷の敷地内に侵入したからだった。 何に使われているかも分からない大きな倉庫。 その扉の向こうに、小さな光源があった。 小さな入口のわずかな隙間から細い糸のような灯りが漏れている。 胸がどきりと高鳴った。 無人の別荘地で、ぽつんと点灯した灯り。 つまりこの中には、他の参加者がいる可能性が高いということだ。 正直、“他の誰か”と接触できることは、頼もしくもある。 しかし、その“誰か”が生き残れる一人を目指している――つまり、殺し合いに乗っていることだって大いにあるのだ。 それに、少なくともその“誰か”は遠子先輩ではないと思う。 この『実験』が始まってから、既に数十分が経過している。 遠子先輩は、いつまでも一か所に隠れているような性格じゃない。 この近辺からスタートしたなら、もう移動してしまっているだろう。 もちろん、怪我をして動けなくなっているという嫌な可能性もなくは無いけれど……。 遠子先輩を優先するなら、ここは見過ごした方が効率的なのかもしれない。 ここから“図書館”までは、かなり距離があるのだから。 何より、ぼく自身、人とのコミュニケーションがあまり得意ではない。 高校生活でそうしていたように、当たり障りのない会話ならば演じられるけれど、未知の参加者との接触は、正直なところ気が重い。 しかし、ぼくに『見過ごす』という選択肢はなかった。 ぼくは誓ったのだ。 もう、見ないふりはしないと。 どんな現実からも、目を逸らすことはしないと。 怠惰や臆病から気づかない振りをして、楽な道に流れることだけはしないと。 だから、たとえ荷が重いことだとしても、ぼくは目の前の人間を見捨てたくない。 ましてや、それが誰かの命を左右するというのなら。 だからぼくは、小さなドア一枚を隔てた、向こうにいる“誰か”に声をかけようと決めた。 しかし、声をかけるのはいいとして、……どう切り出せばいいんだろう。 ことは生きるか死ぬかの問題だ。 なるべく、相手を警戒させずに切り出さなければならない。 ――すみません。そこに誰かいますか。 うん、これじゃ普通に警戒されるな。というか、怖がられるな。 ――すみません。ぼくは怪しいものではありません。 う~ん。そんなことを言うと、逆に怪しく聞こえる。 「すみません……ぼくは聖条高校3年の井上心葉という者です。 ぼくは人を殺すつもりなんかありません。 もし信用できないようでしたら、その中にいてもらって構いません。 このままでいいので、お話だけでもさせてもらえませんか?」 結局、こんな風に言った。 意外なことに、食いつくような即答が返ってきた。 「イノウエコノハさん、ですか?」 はきはきした感じの、女の子の声だ。 「え、はい、そうですけど」 驚きつつも肯定すると、倉庫の中であわただしい気配が動く。 「あなたがあの“井上心葉”さん!?」 いちオクターブはね上がる、叫び声。 同時に、バン、と勢いよく開かれたドア。 その無防備さと意味不明な言葉に、ぼくもあっけにとられて彼女を凝視する。 メガネをかけた髪の長い女の子だった。 その長さは腰まで届くほど。結ぶこともピンでとめることもせずに無造作に伸ばしている。 あまり身なりに気を使うタイプではなさそうだ。 でも、垂れ目がちの大きな瞳と丸いメガネが、知的そうな印象を与えるのか、あまりやぼったい感じはしない。 どこかの高校の制服らしき、赤いネクタイのセーラー服に、ぼくらと似た境遇かもしれないと少し安心する。 そして、その大きな瞳は、どういうわけかキラキラと輝いていた。 まるで、とびきりの宝物を見つけたと言わんばかりに。 どういうわけか、初めて会うはずの名前を知られていて、しかも期待するようにキラキラと見つめられていたのだった。 ◆ さて、どうして田村ひよりが、井上心葉の存在を知ったのか。 それは、彼女が倉庫の中で、一人震えていた理由に起因する。 そう、確かに彼女は震えていた。しかし、恐怖からではない。 その心の中には、色々な感情が渦巻いていた。ただし、混乱やパニックではない。 井上心葉がその場を訪れるまで、彼女は驚くほど明るい顔をしていた。 少なくとも『最後の一人しか生き残れないぞ』と先ほど宣告されたにしては、あり得ない表情をしていた。 ――とても幸せそうにうっとりしていたのだ。 その手に、一冊の本を持って。 「『僕は君の幸福を祈っているよ』……この台詞が泣かせるなぁ。 こんな切ないシチュエーション、大手サークルの名作だってなかなかお目にかかれないっすよ。 やっぱ文学作品だからって敬遠してちゃいけないよねー. 太宰治だって、吉屋信子だって、そういうのを描いてるって言うし。」 ぶつぶつとこぼれ出る独りごと。 その両手には、ワープロ打ちの原稿用紙をホチキスで止めただけの、簡単な冊子。 本を、熟読していたのだ。 それも、高校演劇の脚本を。 もちろん、ワイン倉庫に脚本などが落ちているはずもなく、当然にそれは彼女の支給品だったのだが。 「それにしても素晴らしきはこの脚本を描いた人のセンス! ト書きのアクションと台詞配分のバランス! 淡々としたナレーションの語り口! 並々ならぬ才能を感じるっス!」 賞賛の言葉は、脚本から見出された“萌え”にはとどまらず、それを描いた執筆者へと向かう。 それは、決して過大評価ではない。 そして、根拠のない評価でもない。 田村ひよりは、“伝説の少女A”こと泉こなたも、一目おくほどの筋金入りオタクであった。 そして、生粋の“腐女子”であった。 アマチュアなりに数多くの作品を批評し、同人誌の取捨選択をした経験があり、“ハズレ本をつかまない”という審美眼を磨いてきたのだ。 それゆえに、台本に書かれた“井上心葉”という脚本担当の名前にも、一創作者としてリスペクトの眼を向けていた。 「絶対にこの脚本を描いた人はすごく創作経験がある! 間違いない! オリジナルで何か描かせたら絶対に完売するよ。っていうか、文芸部員だから描いてるはずだよね。読んでみたいなー。 ……ああ、でも上手いからといって、こっちの世界の人とは限らないんだよなー……惜しいなぁ」 脚本を胸に抱きしめ、とても崇高な表情で満足する。 いわゆる賢者タイムというやつだ。 (イノウエコノハさんかー。どんな人だろう。 文芸部で上演した演劇ってことは、きっと脚本を描いた人も、何かの配役で出てるよね。 配役の数が少ない演劇だし、規模の小さそうな劇だし。 誰の役をやってたのかなぁ……あたし的に、野島くんのイメージが似合うんだよなー ……だってこの劇、野島が語り部ってことになってるし。 ……だとしたら、やっぱ井上さんも“受け”のビジュアルなのかなぁ……野島がどう考えても受けだもんなー……。 野島が中世的な美青年って印象だし。大宮はどう考えても攻めだし。 ……いや待てよ。井上さん野島のヘタレ攻めって説も――) そしてとうとう、妄想の方向は彼女の専門領域である掛算の世界に。 賢者タイムはだらしなく崩れてゆき、ニヨニヨとしまらない笑顔があらわれる。 「……って、いかんいかん! 今はダメ! 何やってんだあたしは~っ!!」 しかし、いくら妄想力が旺盛とはいえ、彼女もまた常識ある一般女子高生である。 さすがに、この時ばかりは、我に返った。 「友達が危ないっていうのに会ったことない文芸部の人にまで妄想して……自重しろ。こんな時ぐらい自重しろ~……」 訪れたのは、強烈な揺り戻しの自己嫌悪。 両手を頭に当て、樽の上で文字どおり頭をかかえた。 「……自重して……自重するのはいいけど、これからどうしよう。 いきなり『実験を始める』とか『魔女のくちづけ』とか、今起こってることだって、たいがい信じられないしなぁ……。 こういう閉鎖空間モノも、題材としては面白いんだろうけど、実際に体験するとなるとねー……。」 溜息混じりに呟いた時だった。 「すみません……」 ハスキーな高い声が、ドアの向こうから聞こえた。 妄想の世界から帰って来たひよりにとっては完全な不意打ちであり、体は硬直して心臓は止まる。 しかし、である。 声の主はこう続けたのだ。 「ぼくは聖条高校3年の井上心葉です。人を殺すつもりなんかありません。 信用ができないようでしたら、その中にいてもらって構いません。 せめてお話だけでもさせてもらえませんか?」 なん……だと? ◆ 「じゃあ田村さんは、支給品でぼくのことを知ったと……」 「そういうことです。あたしあの『友情』に感動しまして、描いたひとに会いたいと思ってたところだったんですよ~。 そしたらとんでもない男の娘……ゲフンゲフン! 野島のイメージそのままな人が出て来たから、感動しまして」 「いや……あれは原作をそのまま写したような台本だから、そんな大したものじゃないよ」 「そんなことないっすよ! テンポの良く読めるように工夫するのだって、センスが要るんだから。あたしだっていつも……」 「いつも? 田村さんも文芸部に入ってるとか?」 「いや、あたしは……その、個人的に4コマ漫画とかを、ですね……」 田村さんは、顔を赤らめてもじもじした。 とても嬉しそうなのに、何故だか時々、とても歯切れが悪くなる。 「まぁ、それは置いとくとして。田村さんも友達を探してるんだよね。 今はそっちの話をしようか」 「はいっ。そうでした。え~と、あたしの知り合いは5人いるんですけど……」 田村さんは我に返ったように、どぎまぎと会話を始めた。 友好的で安全な人、なのだろう。 少なくとも、こんな殺し合いで平然としているだけ、ずいぶんすごいことだと思える。 ちょっと能天気というか、話がそれることはあるけれど、とても殺人などを考えているようには見えなかった。 ちゃんとした協力関係を築けそうな人だ。 それに、ぼくの描いた脚本で感動してくれたというのは嬉しいことなのだが ……それにしても、興奮しすぎじゃないだろうか。 そのうっとりした表情はまるで、ぼくが描いた三題噺(デザート)を期待して待つときの、遠子先輩に似ていた。 遠子先輩が、極上のオカズを眼の前にした時のような……失礼、誤解を招く言い方になった。 遠子先輩が、極上のオヤツを眼の前にした時のような、輝きっぷりだった。 まぁ、いいか。 本好きな遠子先輩のように、本や漫画を読むことが大好きな人なのだと、ぼくはそう納得した。 【B-5/別荘地の倉庫/一日目 深夜】 【井上心葉@〝文学少女〟シリーズ】 [状態]健康、ちょっと引いてる [装備]聖条高校の制服 [道具]基本支給品一式、不明支給品1~3(確認済み) [思考]基本:知り合いと共に生還する 1・田村ひよりと情報交換。 2・知り合いを探し、守る。天野遠子を最優先。 ※天野遠子の卒業後からの参戦です 【田村ひより@らき☆すた】 [状態]健康、男の娘を発見したことによる興奮状態 [装備]陵桜高校の制服 [道具]基本支給品一式、聖条学園文学部の演劇台本@〝文学少女〟シリーズ 不明支給品0~2(確認済み) [思考]基本:殺し合いはしない 1・井上先輩と情報交換。 2・知り合いを見つけたい。 ※井上心葉をリスペクトしました。 【聖条学園文学部の演劇台本@〝文学少女〟シリーズ】 文化祭で上演した演劇『友情(武者小路実篤)』の為に、井上心葉が書き下ろした脚本。 いちいち天野遠子の推敲が入っているので、高校演劇の脚本としてはかなりレベルが高いと思われる。 脚本家を描いた井上心葉は、当日にきゅうきょ代役で主人公の野島を熱演して一部の腐った女子生徒から大好評を得た。 Back 037バトルロワイアルは魔法で満ちている 投下順で読む Next 039さらばいとしき女(ひと)よ GAME START 井上心葉 Next GAME START 田村ひより Next
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著作権を盾に管理者から釘を刺すメール(2005年9月29日) kemushi_kabaです。このメールは購入者様全員に送信しております。▲全員例外なくすぐに10万あげます▼絶対返金▲余裕でミリオネアの件でお世話になっています。IDが削除されてしまったので少しでも不安を和らげるため納期を変更して送信させていただきます。商品お渡しの前に再度確認して頂きたいことがございます。良識ある皆様におかれましては当然のことでしょうが、最近、事の重大性を理解していない輩が多すぎますので説明させていただきます。 ・本商品の著作権はkemushi_kabaが所有しています。転載転売はいかなる事情があろうとも禁止させていただきます。最近よく聞きますが、『著作権は登録しなければ権利を主張できないので、登録していないなら転売転載は自由にやってよい。購入したからには購入者に所有権が移るので自由にしてよい』これらは全くのでたらめですのでご注意下さい。例え登録していなくとも、状況証拠等からkemushi_kabaに著作権があることは明白です。また、このような行為は信義誠実の原則(民法1条2項)にも抵触します。要するに、法律に抵触しない行為であっても一般常識で考えてみてマズイと思われる行為は罪に問われますよ、ということです。高価なものですので、情報の取り扱いには十分注意して頂くようお願い申し上げます。もう一つ約束して頂きたいことがあります。それは、本取引の進行状況・結果・kemushi_kabaからのメール内容等、本取引に関する一切のことを他言しないことです。もちろんネット掲示板への投稿も禁止させていただきます。理由を申し上げます。まだ本情報を渡してないのでわからないかもしれませんが、上述のような投稿が増えてしまうと私の情報が広まってしまい、他の方が儲けられなくなる可能性があるからです。確かに、少しぐらいなら広まっても大丈夫でしょうが、インターネットの力は未知数です。最近の例でいいますと、ある女性が友人にメールで、『あの銀行は危ないらしいよ』と送ったのが広まってしまい、取り付け騒ぎが起きてしまって、その銀行は営業休止を余儀なくされたという事件がありました。私の情報は非常に単純なものですので、取引の進行状況や私からのメール内容だけで十分ネタバレの可能性があります。こうなってしまうと数十人いる購入者様が儲けられなくなってしまい、ゆくゆくは賠償問題になるでしょう。私は年500万円をお約束しています。仮に今回の購入者様が30名様だとすると、500*30=1億5千万の損害が発生しています。これだけの賠償要求されてもいいのならどうぞ投稿して下さい。現実問題としてこれだけの損害が認定されるとは思えませんが、例え5%の賠償が認められたとしても750万円の賠償です。十分ご注意下さい。もちろん、『私は購入しました』とかその程度の書込みは構いません。念のため言っておきますが、情報内容が気に入らなかったといってて転売転載をしていいわけではありません。そのような理由で転売転載されると他の方が儲けられません。また、これは詐欺情報だ!と勝手に決めつけて、詐欺だから転売転載何をやってもいいんんだという人もいますが、これも間違いです。詐欺か違法かを判断するのは警察や裁判所であって貴方ではありません。もちろん、そういった機関がそういう判断をしたのなら別ですが折り返し、このメールの内容全てに同意し、反した場合は無条件で100万円の賠償金を支払うことを、署名付きで返信下さい。無理だという方は情報の1部分だけのお渡しとなります。要するに、今回の取引を誰にも言わなければ何も問題ないのです。自分一人で黙って儲けていればそれでよいのです。 大変価値のある情報なので約束を守ってもらわなければお渡しできません。ご理解くださいませ。こちらからの返信は48時間以内を心がけておりますが、もし48時間以内に返信がなければお手数ですが催促ください。よろしくお願い申し上げます。
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「彼女には、あなたの指示通りのものを渡しましたよ」 「……そう。何から何まで世話になるわね」 「しかしあなたも残酷なことをする」 「あなたにだけは、家庭環境のことを説教されたくないわ」 「『家庭環境』ですか。『娘と思ったことは一度もない』のでは?」 「…………」 「それに私は、憎まれてはいますけれど、それでも兄弟仲は良かったんですよ?」 ※ ※ フェイト・テスタロッサに支給されたものは二つ。 ひとつは、手紙だった。 しかし、そこに書かれている内容は、フェイトを恐怖させ、絶望させた。 『君には、この実験で『ジョーカー』の役割を演じてもらう。 実験に協力し、参加者の数を減らしてほしい。 難しく考えることはない。さっきも会場にいる皆に『生きろ』と命令したばかりだからね。 つまり、他の69人に命令したことと変わらない。 ただ、君の監視は特別念入りに目を光らせているというだけだ。 対主催行動をとればすぐ分かるようになっていると、思ってくれればいい。 とはいえ、突然こんなことを言われても、いきなり決断することは難しいと思う。 そこで、君のお母さんの身柄を確保させてもらった。 その代わり無礼の、お詫びというわけではないが、望み通りの働きをしてくれた暁には、『願い事』として『望むだけのロストロギア』をさしあげよう。 十全の働きができるよう、あらかじめ任意で支給品を選ばせてもらった。 健闘を祈っている。 P.Sお母さんからの伝言を預かっているよ。『たすけて、フェイト』だそうだ』 同封されていた映像端末には、椅子に座らされ、バインドで手足を拘束された母親が映っていた。 震える手で、もうひとつの支給品を取り出す。 ディパックから姿を現した、漆黒の杖。 「バルディッシュ……」 家庭教師のリニスが、フェイトの為につくってくれた専用デバイス。 どんな時でも道を切り開いてくれた、金色の閃斧。 その頼もしさが、逆に今のフェイトには重くのしかかる。 これさえあれば、フェイトは大抵の困難を乗り越えられる。 ――人を殺すことだってできる。 リニスは、フェイトが人を殺すことを絶対に望まないだろう。 でも、 ――たすけて、フェイト。 お母さんが、わたしに『たすけて』と言っている。 非殺傷設定を、解除。 お母さんは、わたしの全て。 だから、わたしは何としてもお母さんを助けなければいけない。 わたしのせいでお母さんが死んでしまったら ――それはわたしが死ぬよりも恐ろしいこと。辛いこと。 「バルディッシュ――ごめんね」 フェイトは、バルディッシュに額を押し付けた。 体が震える。 涙は、流さない。 泣いてはいけない。 これから人殺しになる人間に、泣く資格は、ない。 ※ ※ フェイトは、重い荷物を背負ったように、森のなかをひたひたと歩く。 飛ぼうとしなかったのは、地上からの狙撃を警戒しただけでなく、少しでも“その時”を先送りにしたかったからかもしれない。 そして、フェイトは出会ってしまった。 「そこの人! 俺はこのゲームに乗ってない! そっちはどうなんだ?」 中華風の着物に身を包んだ、フェイトより少し年上ぐらいの少年だった。 眉が太く、意思の強そうな瞳が光る。 一歩も引かなそうな構えに、何度もぶつかった“あの子”を少しだけ思い出した。 バルディッシュの報告によると、資質は特殊だが、何らかの魔力を持っているようだ。 フェイトのような魔力変換資質に近いらしいが、断定はできないとのこと。 最初にいた空間やフェイトの首の刻印も、バルディッシュの知らない技術だった。 参加者の中にも、そういうよく分からない力を持っている人がいるのかもしれない。 どちらにせよ、すぐに終わらせてしまいたい。 少年は、フェイトの方に近づいて来る。 「俺は、自分の為に誰かを殺すのも、大切な人を守る為に殺すのも嫌だ。俺の大切な人も、きっとそう言うと思うから。 だから、殺し合いに乗らないし仲間がほしい。俺と一緒に来てほしい」 大切な人、という言葉に、フェイトの胸が苦しくなる。 ごめんなさい。 そう口を動かしたが、言葉にはならなかった。 それは偽善だ。 この人と話をしてはいけない。 言葉にしなきゃ分からないこともきっとあるよと、言ってくれた子がいた。 でも、こんなことになって、何かをしようとすればお母さんが殺されるかもしれなくて、 そんな時に、誰かと話をして、何かが変わるはずもない。 話しても、分からない。 言葉は、人を救わない。 「フォトンランサー」 バルディッシュが球形の発射台(スフィア)を創り出す。 空中に生成された黄金の球体に、少年の顔がこわばる。 「ファイア!」 光の槍が、闇を斬り裂きはしった。 金色の処刑槍は音速を超える速さで疾駆し、逃げる間を与えずに少年の体に着だ―― ――弾かれた。 少年を覆うようにして発動した何かの『壁』によって。 ※ ※ 小狼が、その攻撃から身を守ることができたのはただの偶然だった。 不穏なスフィアを見て、とっさに支給品のひとつを取りだしたに過ぎない。 小狼にはその光球が何をもたらすのか分からなかったし、その武器――クロウカード――が、ちょうど『盾』のカードだったことも偶然だ。 しかし、『盾』のカードが発動し、見えない壁が小狼を守ったことは、偶然ではなかった。 「カードが、守った……?」 文字通り、光の速さで飛んできた弾道が、『盾』に弾かれて爆散。 それは、カードの意思だった。 何故、カードの効力が自動的に発動したのか。 それ以前に、何故、木ノ本桜以外の命令をきかないクロウカード(改めさくらカード)が、支給品として配布されたのか。 それは、主催者が課した何らかの制限のひとつだったのかもしれない。 あるいは、『盾』のカードの『大事なものを守ろうとする』習性によるものだったのかもしれない。 だからこそ、本来の主である少女の『大事』な存在である、その少年を守ろうとしたのかもしれない。 どちらにせよ、小狼が知り得たのは『大切な人のカードが小狼の味方をしてくれた』という事実。 ※ ※ 「自動防御……?」 フォトンランサーの狙いは正確。 真直ぐ、少年の心臓を照準していた。 防御を発動する間も与えなかったはずだ。 少年の持っているカードのようなものがデバイスの役割を果たし、自動的にシールドを形成した。フェイトはそう判断する。 「ファイア!」 それでもフェイトが攻撃手段に“砲撃”を選んだのは、未だ心に躊躇いがあったからかもしれない。 サイスフォームによる『鎌での直接殺傷』を、無意識に忌避したからかもしれない。 スフィアの数を増量。三つに増えた光球は、連続でフォトンランサーを精製。 見えない壁の『盾』に、黄金の槍が何本も弾けた。 ※ ※ 『盾』に守られながら、小狼は考える。 未知の魔法。凶暴な光の槍。 それらを前に、小狼なりの知恵を尽くして、考える。 『盾』のカードも、そう長くはもたない。 今は何とか耐えてくれているが、単純なエネルギー量はおそらく少女の方がずっと上だ。 先に少女が焦れて、槍の連撃を解除してくれることを期待するしかない。 そうすれば、『もうひとつ』の支給品で、チャンスを作ることができる。 『もうひとつ』も、小狼の大切な人が信じた『カード』のひとつだ。 そのカードを、小狼は信じた。 そして、好機はやって来た。 「バルディッシュ!」 「Scythe Form」 黒い斧の頭が直角に折れ曲がり、そこに金色の新たな刃が生まれる。 『斧』が『鎌』になった。 そんな風に変形した。 待っていた。 砲撃が、少しの間だけやむ。それを小狼は待っていた。 『盾』に一旦、消えて貰う。 『盾』自身の負担も相当溜まっていたはずだし、何よりカードの制限が分からない以上、二枚同時に扱えるかが分からない。 もう一枚のカードをかざしたまま、小狼は地を蹴った。 少女から逃げるのではなく、前へ。 少女めがけて走った。 それは『少女に誰にも傷付けさせず、ここで止めたい』という、蛮勇と甘さだったのだが、結果的には正解の行動だった。 フェイトに『迎撃』ではなく『追撃』をさせれば、それは彼女の独壇場だったのだから。 こと『速度』という点においてフェイトを上回る使い手は、この会場どころか、ミッドチルダ全体を探したところでそういないのだから。 そして、どうにかしてフェイトを捕まえてしまえば、ゼロ距離での単純な格闘術なら、小狼の方に分があったのだから。 しかし、少年の暴挙にもフェイトは揺るがない。 向かって来る敵を逆に打ち倒す手段も、彼女は数多く持っているのだから。 それでも、躊躇いはわずかにあった。 その鎌で人を殺し、返り血を浴びる、躊躇い。 だからこそ、その鎌を撃ちおろすのではなく、中距離攻撃で『鎌』を打ち出そうとした。 「アークセイ……」 「『幻(イリュージョン)』!」 刃のブーメランが打ち出されるより早く、小狼は『もう一枚』のカードをかざした。 それは、直接の攻撃力を持たないカード。 しかし、『大切な人』がいる人間なら、間違いなく揺さぶられてしまうカード。 『幻』のカードの効力は、『対象が最も想う者の姿を映す』こと。 効く、と小狼は信じた。 なぜなら、少女は『ごめんなさい』と言ったから。 声にならなかったけど、口を動かしたのを、小狼は見逃さなかったから。 そんなに苦しそうに人を殺す少女なら、きっと誰か、彼女を想う人も、彼女が想う人も、いるはずだから。 フェイト・テスタロッサが今、一番に会いたいと想っているのは、母、プレシア・テスタロッサだった。 しかし、 『幻』は、会いたいその人の姿をとらなかった。 「……あなたは!」 カードから『彼女』は飛び出した。 真白いドレス。 胸元を飾る赤いリボン。 白いリボンと共に揺れる、二つに結ばれた茶色い髪。 決意をたたえた、黒い瞳。 『幻』のカードは、彼女が今、一番に『会いたくない』と想っていた少女の姿を、映し出していた。 ――わたしの名前は■■■■■! 何度も名乗ってくれた『あの子』が、少年を庇うようにフェイトの前に立つ。 悲しそうな目で、フェイトを見ていた。 「It’s illusion,master!(幻覚です!)」 バルディッシュの警告は、届いていた。 幻だということは、フェイトにも分かっていた。 けれど、 手が、腕が、頭が、リンカーコアが、止まった。 あの子もこの『実験』に呼ばれているのだろうか、と。 私は、あの子も殺さなければいけないのだろうか、と。 そんな想像をしてしまった。 胸が刃物でさされたように痛んだ。 「……っ。それでも、私は!」 中途半端な状態で、それでもアークセイバーを振りかぶろうとする。 少年は既に、5メートルの距離にいた。 少年が、跳んだ。 フェイトは、初めて恐怖を覚える。 実力は圧倒的に下のはずの、その少年が全く恐れていないことに。 その、『あの子』と同じ、迷いのない瞳に。 恐怖が生んだ、できるはずだった回避の失敗。 殺人への躊躇い。 主の躊躇いを映したバルディッシュ。 未知の『カード』による魔法。 そして何より、そこにいた『白い少女』。 そんな数々の迷いも、フェイトの動きを遅らせた。 たとえフェイトの体がバリアジャケットに守られていても、優れた飛行技術を有していても、それらを操るフェイト自身は、9歳児程度の少女でしかない。 たとえ持っている杖が無敵でも、それを握っている力は、9歳児の握力でしかない。 小狼の手刀が、正確にフェイトの手首を撃ちすえた。 「あっ、バル――」 バルディッシュがフェイトの手から叩き落とされる。 それによって、中途半端に照準されていたアークセイバーも軌道をそれ、小狼の脇腹をかすめた。 叩き落とされたバルディッシュを、小狼は空中で奪い取る。 だん! 小狼の体当たりが、フェイトを地に倒していた。 その左手がバルディッシュを横にして握り、その柄の部分を使ってフェイトの胴を押さえつけている。 その格好は、背中を盾に、フェイトを何かから庇っているようにも見える。 フェイトの瞳は揺れている。 すべきことが出来なかったと悲しむように。 しかし、心のどこかでそうは思っていないように。 小狼の瞳は揺るがない。 人を傷つけるようなやり方を、小狼の大切な人は喜ばない。 「剣」のカードを封印しようとした時、さくらは小狼を怒った。 友達を傷つけるようなやり方を使ったことを、怒った。 その時から、ずっと変わらないことだから。 「こんなことやめるんだ! 事情があるんなら話を聞く! 俺にできることなら協力する! だから――」 ざくっ 小狼の背中に、金色の刃が刺さった。 「あ……?」 「う……」 何が起こったのか分からない、という小狼の顔。 一瞬で理解し、苦渋に染まったフェイトの顔。 アークセイバーは、ブーメラン状に楕円を描いて軌道する。 戻ってきた刃が、小狼の背を貫いた。 偶然と勇気の逆転は、偶然の逆転に覆された。 小狼の腹部から、貫通した刃をつたって、ぽたぽたと血がしたたる。 したたった血が、フェイトのバリアジャケットを濡らす。 フェイトは少年をせめて楽にする為に、その言葉を紡いだ。 「セイバーブラスト」 刃が爆ぜた。 爆発が臓器を心臓を破壊し、少年の命をあっという間に連れて行った。 「さく……」 言いかけた名前が、少年の遺言になった。 フェイト・テスタロッサは、とどめをさした少年の血と臓器を大量に被った。 地面にこぼれた金髪も、血で染められていた。 焼け焦げた腸や心臓の欠片が、黒いバリアジャケットの上に散らかる。 しばらく、そのまま動けないでいた。 瞳を凍りつかせたまま、動けないでいた。 殺した。 こうしてフェイト・テスタロッサは、人を殺した。 【李小狼 死亡】 【F-6/森/一日目深夜】 【フェイト・テスタロッサ@魔法少女リリカルなのは】 [状態]健康、罪悪感、魔力消費(小) [装備]バルディッシュ@魔法少女リリカルなのは [道具]基本支給品一式×2、 『盾』のカード@カードキャプターさくら(六時間後まで使用不可) 『幻』のカード@カードキャプターさくら(六時間後まで使用不可) [思考]基本:お母さんを助けるために殺し合いに乗る 1・??? ※「リリカルなのは」9話、なのはとの決闘前からの参戦です。 ※名簿の「高町なのは」の名前には気づいていません。 (なのはの名前をきちんと覚えていないため) ※クロウカードに関する制限……木ノ本桜以外の人物にも使用可能。 (カード自体の魔力で発動するため、一般人にも使用可能) 一回の発動時間は15分。一度使用すると、次の六時間までは使用不可。 カードがダメージを受けた場合は、十二時間の間使用不可となる。 Back 013文学少女と恋する幽霊【ゴースト】 投下順で読む Next 015どうしてこうなった(前編) GAME START フェイト・テスタロッサ Next 036魔導師VS吸血鬼 GAME START 李小狼 GAME OVER Back 000はじまり、はじまり 鳴海清隆 Next GAME START プレシア・テスタロッサ Next
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※審査前生データ(coderesz****.txt)です ※0票キャラは審査対象外 有効コードがある票の順位 有効コードがある票の順位 1位 4票 西沢歩@ハヤテのごとく!! 2位 3票 愛沢咲夜@ハヤテのごとく!! 2位 3票 貴嶋サキ@ハヤテのごとく!! 4位 2票 ソニア・シャフルナーズ@ハヤテのごとく!! 4位 2票 春風千桜@ハヤテのごとく!! 4位 2票 霞愛歌@ハヤテのごとく!! 4位 2票 イズミ・カーティス@鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST 4位 2票 オリヴィエ・ミラ・アームストロング@鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST 4位 2票 市原さん@B型H系 10位 1票 ももかっぱちゃん@はなかっぱ 10位 1票 ポッポリーヌ@はなかっぱ 10位 1票 古手桜花@ひぐらしのなく頃に礼 10位 1票 園崎詩音@ひぐらしのなく頃に礼 10位 1票 梨花の母@ひぐらしのなく頃に礼 10位 1票 知恵留美子@ひぐらしのなく頃に礼 10位 1票 羽入@ひぐらしのなく頃に礼 10位 1票 なずなのお母さん@ひだまりスケッチ×☆☆☆ 10位 1票 まりんちゃん@ひだまりスケッチ×☆☆☆ 10位 1票 みさとセンパイ@ひだまりスケッチ×☆☆☆ 10位 1票 リリさん@ひだまりスケッチ×☆☆☆ 10位 1票 中山@ひだまりスケッチ×☆☆☆ 10位 1票 夏目@ひだまりスケッチ×☆☆☆ 10位 1票 折部妹@ひだまりスケッチ×☆☆☆ 10位 1票 折部姉妹@ひだまりスケッチ×☆☆☆ 10位 1票 折部姉@ひだまりスケッチ×☆☆☆ 10位 1票 智花@ひだまりスケッチ×☆☆☆ 10位 1票 有沢@ひだまりスケッチ×☆☆☆ 10位 1票 桑原先生@ひだまりスケッチ×☆☆☆ 10位 1票 皆口先生@ひだまりスケッチ×☆☆☆ 10位 1票 真実@ひだまりスケッチ×☆☆☆ 10位 1票 藤堂さん@ひだまりスケッチ×☆☆☆ 10位 1票 サソリーナ@ハートキャッチプリキュア! 10位 1票 シプレ@ハートキャッチプリキュア! 10位 1票 堀内アキ@ハートキャッチプリキュア! 10位 1票 志久るみ@ハートキャッチプリキュア! 10位 1票 番慶子@ハートキャッチプリキュア! 10位 1票 露木かりん@ハートキャッチプリキュア! 10位 1票 高岸あずさ@ハートキャッチプリキュア! 10位 1票 シャルナ・アーラムギル@ハヤテのごとく!! 10位 1票 ジェニー@ハヤテのごとく!! 10位 1票 ヒナギク・雪路の養母@ハヤテのごとく!! 10位 1票 フォルテシア・ニース@ハヤテのごとく!! 10位 1票 マヤ@ハヤテのごとく!! 10位 1票 三千院紫子@ハヤテのごとく!! 10位 1票 天王州アテネ@ハヤテのごとく!! 10位 1票 愛沢日向@ハヤテのごとく!! 10位 1票 日々野文@ハヤテのごとく!! 10位 1票 牧村志織@ハヤテのごとく!! 10位 1票 鷺ノ宮九重@ハヤテのごとく!! 10位 1票 鷺ノ宮初穂@ハヤテのごとく!! 10位 1票 鷺ノ宮銀華@ハヤテのごとく!! 10位 1票 木下秀吉@バカとテストと召喚獣 10位 1票 クローリー@バスカッシュ! 10位 1票 ルージュ@バスカッシュ! 10位 1票 ナミー@バトルスピリッツ 少年激覇ダン 10位 1票 お京@バトルスピリッツ 少年突破バシン 10位 1票 キリ島セツ子@バトルスピリッツ 少年突破バシン 10位 1票 ナナリン@バトルスピリッツ 少年突破バシン 10位 1票 バイトさん@バトルスピリッツ 少年突破バシン 10位 1票 澤ラギミヤコ(Jの母)@バトルスピリッツ 少年突破バシン 10位 1票 スイーティー・ミリィ@ファイト一発!充電ちゃん!! 10位 1票 アズキーナ@フレッシュプリキュア! 10位 1票 ラビリンスの少女@フレッシュプリキュア! 10位 1票 ミズ・シタターレ@プリキュアオールスターズDX2 希望の光☆レインボージュエルを守れ! 10位 1票 日向みのり@プリキュアオールスターズDX2 希望の光☆レインボージュエルを守れ! 10位 1票 霧生満@プリキュアオールスターズDX2 希望の光☆レインボージュエルを守れ! 10位 1票 霧生薫@プリキュアオールスターズDX2 希望の光☆レインボージュエルを守れ! 10位 1票 クレオ・サーブラフ@ブレイクブレイド 10位 1票 サクラ@ブレイクブレイド 10位 1票 シギュン・エルステル@ブレイクブレイド 10位 1票 ナルヴィ・ストライズ@ブレイクブレイド 10位 1票 リィ@ブレイクブレイド 10位 1票 松井ゆみ@ペンギンの問題 10位 1票 高橋シャルロット@ペンギンの問題 10位 1票 ビッキ@ホッタラケの島 ~遥と魔法の鏡~ 10位 1票 遥の母@ホッタラケの島 ~遥と魔法の鏡~ 10位 1票 アヤコ(ヒカリのママ)@ポケットモンスター ダイヤモンド&パール 10位 1票 ウララ@ポケットモンスター ダイヤモンド&パール 10位 1票 キクコ@ポケットモンスター ダイヤモンド&パール 10位 1票 ギザみみピチュー@ポケットモンスター ダイヤモンド&パール アルセウス超克の時空へ 10位 1票 コトネ@ポケットモンスター ダイヤモンド&パール 10位 1票 サトシのベイリーフ@ヒカリ@ポケットモンスター ダイヤモンド&パール 10位 1票 サルビア王女(フリージア)@ポケットモンスター ダイヤモンド&パール 10位 1票 シーナ@ポケットモンスター ダイヤモンド&パール アルセウス超克の時空へ 10位 1票 シロナ@ポケットモンスター ダイヤモンド&パール 10位 1票 スズナ@ポケットモンスター ダイヤモンド&パール 10位 1票 ノゾミ@ポケットモンスター ダイヤモンド&パール 10位 1票 ヒカリ@ポケットモンスター ダイヤモンド&パール 10位 1票 マイ@ポケットモンスター ダイヤモンド&パール 10位 1票 ムサシ@ポケットモンスター ダイヤモンド&パール 10位 1票 メリッサ@ポケットモンスター ダイヤモンド&パール 10位 1票 天野遠子@劇場版“文学少女” 10位 1票 姫倉麻貴@劇場版“文学少女” 10位 1票 朝倉美羽@劇場版“文学少女” 10位 1票 琴吹ななせ@劇場版“文学少女” 10位 1票 竹田千愛@劇場版“文学少女” 10位 1票 ふじょこ@婦女子の品格 10位 1票 貴代先輩@婦女子の品格 10位 1票 おネエ@東のエデン 劇場版 10位 1票 亜東アカネ@東のエデン 劇場版 10位 1票 北林とし子@東のエデン 劇場版 10位 1票 岩下あや@東のエデン 劇場版 10位 1票 飯沼千草@東のエデン 劇場版 10位 1票 Juiz(ジュイス)@東のエデン 劇場版 10位 1票 エルフィン@爆丸バトルブローラーズ ニューヴェストロイア 10位 1票 クラウスの姉(クロウディア)@百日の薔薇 10位 1票 クトゥグア(クー子)@這いよる! ニャルアニ 10位 1票 ニャルラトホテプ(ニャル子)@這いよる! ニャルアニ 10位 1票 八坂真尋@這いよる! ニャルアニ 10位 1票 エリシア・ヒューズ@鋼の錬金術師FULLMETAL ALCHEMIST 10位 1票 キャスリン・エル・アームストロング@鋼の錬金術師FULLMETAL ALCHEMIST 10位 1票 グレイシア・ヒューズ@鋼の錬金術師FULLMETAL ALCHEMIST 10位 1票 トリシャ・エルリック@鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST 10位 1票 ニーナ・タッカー@鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMISTT 10位 1票 パニーニャ@鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMISTT 10位 1票 ブラッドレイ夫人@鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMISTT 10位 1票 マーテル@鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMISTT 10位 1票 マリア・ロス@鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST 10位 1票 メイ・チャン@鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST 10位 1票 ランファン@鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST 10位 1票 ロゼ@鋼の錬金術師FULLMETAL ALCHEMIST 10位 1票 森先生@B型H系 10位 1票 ヒロコ@BATON 10位 1票 ミカル@BATON 10位 1票 メデューサ@BATON 10位 1票 ルーシー・スクレイプ@BATON 10位 1票 花天狂骨(脇差)@BLEACH 10位 1票 アクエリアス(宝瓶宮の星霊)@FAIRY TAIL 10位 1票 ウルティア@FAIRY TAIL 10位 1票 エルザ・スカーレット@FAIRY TAIL 10位 1票 カナ・アルベローナ@FAIRY TAIL 10位 1票 シェリー・ブレンディ@FAIRY TAIL 10位 1票 ジュビア・ロクサー@FAIRY TAIL 10位 1票 バルゴ(処女宮の星霊)@FAIRY TAIL 10位 1票 ミラジェーン@FAIRY TAIL 10位 1票 ルーシィ・ハートフィリア@FAIRY TAIL 10位 1票 レビィ・マグガーデン@FAIRY TAIL 10位 1票 インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング@HELLSING 10位 1票 セラス・ヴィクトリア@HELLSING 10位 1票 アリス(アヴィスの意志)@PandoraHearts ==================================
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主催者の男は言った。 ――中には立派な殺人兵器もあれば、可愛いハズレが入っていることもあるから、運次第で実力差を埋めることもできる。 そして、志村新八は憤慨した。 「全然まったく可愛くねーよ! むしろめっちゃ腹立つんですけど!! こんなんで身を守れってか! 豆腐の角に頭ぶつけて死ぬより難しいわ!」 そして、地に手と膝をつき、正に『orz』というポーズで悲嘆する彼の前には、三つのランダム支給品。 つばの大きな羽飾りつき麦わら帽子。 黄色いアヒルのイラストが描かれたノートブック。 何の変哲もないテニスラケット。 誰から見ても、(ラケットはまだともかく)殺し合いはおろか自衛手段にすらならないハズレだった。 志村新八とて、戦いの経験がない素人ではない。むしろ、歴戦の侍と言っても過言ではない。 しかし、その地力の礎となるのは十年余りの道場剣術。 竹刀の一本もないこんな装備では女子どもにすら殺されかねない。 「しょうがない……こうなったら一刻も早く銀さんたちと合流しないと」 ろくな装備がない以上、誰かから分けてもらうしかない。 それでなくとも、こんな殺し合いの場では仲間との合流が最優先だ。 ひとまず新八は、ラケット以外の支給品をディパックにしまいこんだ。 ノートにはびっしりと女の子の可愛らしい字が書きこまれていたが、中身は読まないでおく。 誰が読むかも分からない会場に、自分の日記をばらまかれるのも酷い話だ。 ……もっとも、ひとたびそこに書かれた内容を読めば、違う意味での酷さに戦慄していただろうが。 名簿に書かれていた彼の知り合いは、万屋の坂田銀時と神楽、そして真選組の土方十四郎。 いずれも血の気は多いが、決して殺し合いなどするはずもない、頼れる仲間だ。 万屋で働くうちに数々の事件を解決してきた新八は、こういう非常事態で結束が何よりも大事だと知っている。 銀さん、神楽ちゃん、待っててね。志村新八が今行くよ――武器もないけど。 ――え? なにお前、丸腰なの? 勘弁してくれよ~これだから新八はよ~。 ――そんなんだからお前はいつまでたっても新八なんだヨ。 「くじ運が悪いだけで新八という存在を全否定かよ。しかも人の頭の中で!」 万屋メンバーの予想されるリアクションに突っ込みを入れつつ、彼はなけなしの武器であるラケットを片手に森の中を行く。 「――ぁぁぁぁ」 おや? 誰かの声が聞こえた気がした。 七十人もの人間が集められているのだ。人の声が聞こえるぐらい、べつだんおかしなことではない。 おかしいのは、それがどうも真上の方向から聞こえたということで―― 「きゃあああああああああああっ!?」 もはや幻聴と呼ぶには無理がある、黄色い悲鳴。 新八はぎょっと上空を仰いだ。 そして彼は、少女と出会った。 真っ白い制服を着た幼い少女が、新八のもとへと真っ逆さまに落ちて来た。 新八の頭が、その一瞬『理解不能』の空白で埋まる。 ――銀さん、空から女の子が…… 志村新八、16歳。 彼女いない暦16年。これからもできる見通しは無し。 俗な言い方をすれば女性には餓えていた。 しかし、だからと言ってこんなベタベタなボーイ・ミ―ツ・ガール ――しかもこんな小さな女の子相手に――を幻視するほど虚しい男ではない。 何て言ってる間もなく、少女は等速運動に則った落下で地面へと迫り、 新八はとっさに少女の落下地点へと駈けつけ、 「ぐぼはっっ!!」 振って来た少女を、己の胸で受け止めた。 ――というより、直撃を受けた。 ※ ※ 「ほんとうに、ほんとうにごめんなさいっ!」 「そんなに謝らなくていいよ。なのはちゃんが怪我をしなくて済んだんだから」 高町なのはが顔をあげると、そこにはメガネ少年――志村新八と名乗った――の笑顔があった。 なのはの落下を受け止めてくれたこの人は、あんな高さからの直撃を受けたにも関わらず、なのはのしたことを笑って許してくれた。 「僕のことなら大丈夫だって。ギャグ漫画で突っ込みを張るならこれぐらいで倒れてられないよ」 「ギャグ漫画? ……新八さんはお笑い芸人さんなんですか?」 激突の後はしばらくぴくぴくと痙攣していたし、メガネにはヒビが入っていたのだが……。 でも、落ちて来た先が殺し合いに乗っていない人で良かった。 もしこの場所にいたのが危ない人だったら、なのははそのまま殺されていたかもしれない。 失敗の由来は、支給品の中に『跳(ジャンプ)』と書かれたカードを見つけたことだ。 レイジングハート無しではほとんどの魔法を使えないなのはだったけれど、そのカードからは何だか独特の魔力が感じられた。 説明書によると、そのカードを使っている間は天高くまで跳ぶことができるらしい。 デバイスを持たないなのはは思った。 これを使えば、ユーノ君やフェイトちゃんを探すのに役立つかもしれない。 カードを掲げ、その名前をとなえると、なのはの両の靴に光の羽根が生える。 アクセルフィンの翼に似ていると思った。 なのはは力強く地面を蹴った。 それがいけなかった。 予想していたより、ずっと高くまで跳んだ。 『アクセルフィン』と同系統の魔法だと思ったのも失敗だった。 いつも飛んでいる時と同じ様な先入観だったので、姿勢保持を間違えて空中で天地が反転した。 『跳』のカードにできることは、文字通りジャンプだけ。 飛行魔法と違って、落下中に姿勢を立て直すことはできないのだ。 一度使ったカードは、6時間後まで使えないという。もったいないことをしてしまった。 「結果的には、お互い殺し合いに乗っていない人と会えたんだから良かったじゃないか。 なのはちゃんも友達を探してるみたいだし、一緒に探そう。 二人でいれば、警戒されにくいだろうし」 なのはの支給品から譲り受けた日本刀を腰にさして、新八は立ち上がった。 「はい! がんばります!」 新八の人のよさそうな感じと言葉は、なのはを信用させるのに充分なものだった。 フェイトちゃんはユーノくんも、こういう信頼できる人と会えていますようにとなのはは思って、 ガサガサ、と茂みをかき分ける音がした。 なのはと新八はびくっと震え、後方を注視する。 そこに出現したのは、 「やぁ、はじめまして」 全身を、ターミネーターのロボットのような黒光りする鎧で覆った人間だった。 その顔面部を覆う面頬は、音楽の教科書で見た、能の『般若』のお面のよう。 なのはと新八は、再び悲鳴を上げて跳び上がった。 ※ ※ 結果を言おう、その人――『カノン・ヒルベルト』はいい人だった。 いい人、というか、覆面の下から出て来た『にぱーっ』という笑顔に、二人とも毒気を抜かれてしまったのが正直なところだ。 そしてその人は、二人の参加者を探していると言った。 「鳴海歩とミズシロ火澄という二人に心当たりはないかい? この二人を死なせるわけにはいかないんだけど」 こんな状況で、自分以外の人を心配できるのなら、その人は殺し合いに乗っているわけではないのだろう。 「ごめんなさい。僕たち、この殺し合いで出会ったのはお互いが初めてなんです」 「その人は、カノンさんのお友達なんですか?」 カノンは涼しい顔をして言った。 「ううん。実は、ある人から二人の護衛を頼まれていてね。 その人は参加者じゃないんだけど、一応は依頼を守ってあげたいんだ」 護衛……という言葉がなのはの好奇心を刺激する。 もしかして、クロノくんが働いている時空管理局のように、何か専門的な仕事をしている人なのかもしれない。 だとしたら、味方としてはとても頼りになりそうだ。 「あの……良かったら、カノンさんもわたしたちと一緒に探しませんか! そうやって味方が増えていけば、きっと殺し合いも止められます!」 「ふむ。……その前に、一つだけ聞いていいかな」 「はい!」 「君たちは、どうして殺し合いに乗らなかったんだい?」 なのはは少し困った。 「人殺しなんて、したくないから……だと思います」 「うん、それはそうだね。でも、単に誰も殺したくないってだけじゃ、どっちみち十二時間ルールで全員が死んでしまうよね。 君たちには何か、ここから脱出する方法でもあるのかな?」 あくまで穏やかに、カノンは問いかけた。 なのはは、やっぱり答えに困った。 魔導師としての成長は著しいとはいえ、高町なのはは魔法を習い始めて未だ数カ月だ。 魔法を使っての戦闘はずいぶん上手くなったけれど、魔法知識自体はまだ知らないことばかりだし、『呪い』とやらを解除する方法も分からない。 もしかしたらユーノくんやフェイトちゃんなら、なのはより多くの魔導の知識で、刻印の解き方も分かるかもしれない。 でも、『もしかして』という方法を、脱出法として説明してしまっていいものか。 なのはが迷っていると、カノンが先に謝った。 「ああ、意地悪なことを聞いてしまったね。ごめんね。 ただ僕にも、脱出する方法が分からなかったものだから」 そのカノンは本当に悪かったと思っている風で、なのはから焦りが抜ける。 しかし、そこで明るく言葉をつづけた人がいた。新八だった。 「僕も脱出の方法は分かりません。僕の知り合いの人たちも、『呪い』の解き方なんて分からないと思います。 でも、少なくとも僕は殺し合いをするつもりはありません」 カノンと新八が、静かだが真剣な視線を交える。 「なるほど。その心は?」 「殺し合いをしない理由なんて、結局、殺し合いなんてしたくないからです。だって、命を奪ったら、取り返しがつかないじゃないですか。 殺された方も、殺した方も。それは、僕にとって、自分が生き延びるよりも大事なことです」 新八の答えは、あまりにも明快で、そして高潔だった。 それこそ、9歳のなのはでも、すぐに志村新八という人間を理解できてしまうほどに。 「僕の仲間は、一度、間違えて人を殺しかけたことがあります。 普段はとても優しい女の子なんだけど、一度だけ、我を忘れてそうなってしまったことがあります。 僕はその時、その子が人を殺すのが本当に嫌だと思いました。こんなことが二度とあってほしくないと思いました。 ましてや、それが自分で選びとったことじゃなく、人から無理やり命令されたことなら」 なのはの心に、わずかに沈殿していたわだかまりが消えていった。 そうだ、脱出できるかどうかは関係ないのだ。 なのはだって、ユーノくんやフェイトちゃんが人を殺したりしたら嫌だ。 それを止めようとすることの、どこが間違っているというのか。 カノンも心から感心したように、にこやかな笑顔を浮かべた。 「『取り返しがつかない』か……。そうだね、僕もそう思うよ」 しかし続けてカノンがディパックから取り出したのは、そんな希望にヒビを入れるものだった。 銃だった。 それがサブマシンガンだとかライトマシンガンだとかの種別はなのはに分からない。 しかしとにかく、大型の銃だった。 それはあまりにも、なごやかな空気に不一致で、なのはは首をかしげた。 なんでカノンさんはそんなものを取りだしたんだろう。 きれいな構えで銃を持ったカノンを見て、なのはは呑気に、そんなことを考えていた。 「だから、せめて君たちは苦しまないように――」 「そこの三人。状況を説明してもらおうか」 張り詰めた弦のように緊張感に満ちた声が、場の気温を下げた。 横合いの茂みから姿を現したのは、セーラー服を着たカノンと同年代の女性。 細長い両の指で回転するチャクラムのようなリングは、女性の剣呑な視線とも相まって、鋭利さを強く印象付ける。 そして何よりなのはの印象に残ったのは、鼻筋を真横に横切る、ひと筋の傷跡。 「君は?」 カノンが短く問う。その視線は、先ほどまでの笑みが嘘のように、鋭く、冷たい。 「悲鳴が聞こえたので駈けつけた。 そこのキミ、何故二人に銃を向けているのか、説明してもらおうか」 どうやら、なのはの悲鳴――『跳』のカードの時か、カノンとの遭遇時か――を聞きつけたらしい。 ――いや、いま重要なことは、そんなことじゃなくて。 そう言えば新八さんも、いつのまにか日本刀を構えている。 どうしてなのは以外の全員が、武器を構えているのか。 どうして、先ほどまで『殺し合いはいけない』という話をしていたのに、まるで臨戦態勢のようになっているのか。 どうして、と問いかけながらも、なのはの深層、魔導師としての闘争本能は、警告を発していた。 逃げるか戦うかしなきゃいけない。 でも動けない。どうしたらいいか分からない。 ――レイジングハートがないことが、ここまで心細いものだったとは。 なのはの困惑などまるで意に介さず、 実際にその膠着が解けるのは、ほんの数秒だった。 張り詰めた弦はすぐに切れた。 ――ガキン! ――ぱらららっ サブマシンガンの弾丸の雨が、なのはたち二人の立っていたすぐ右に着弾した。 ※ ※ 茶髪の少年の目を見た瞬間、斗貴子は悟った。 コイツの眼は乾いている。 躊躇なく人を殺せる人間の眼だ。 高速でモーターギアの片輪を射出。 狙いは正確だ。その正確さと速さこそが、モーターギアの強み。 ――ガキン! 発砲に先んじてギアがマシンガンの、その銃身に火花を散らす。 手首は狙わない。暴発の恐れがある。 ――ぱららららっ 銃身がブレたことで狙いをそれた弾丸の雨は地面に着弾。 それでも引き金が絞られていたのはゼロコンマ1秒。 無駄弾を減らす為の慣れたトリガー操作だ。間違いなく戦いなれている。 敵が妨害に驚いた一瞬の隙に、斗貴子は跳躍。 マシンガンと二人の民間人の間に割り込み、己が体で射線を遮った。 「その殺気……貴様、明らかに一般人ではないな。もしやホムンクルスか?」 「ホムンクルス……? 何のことかな。フラスコの中から生まれたという意味では間違っていないけど」 敵は武装錬金に取り乱した様子もなく、銃口を軽く揺らめかせて『照準』を探す。 その銃口は、明らかに斗貴子の『後ろ』を狙っていた。 「君、その女の子を連れて逃げろ」 モーターギア射出のタイミングを見定めながら、斗貴子は背後の少年に命令した。 「そんな! 助けてくれた人を置いて逃げられませんよ」 「いい、足手まといだ。それに、誰がその女の子を逃がすんだ」 背後からはっと息を呑む音。そして、前方からは機械のような声。 「させないよ」 敵が、飛んだ。 そう、『跳ぶ』ではなく『飛ぶ』と言った方が正しい。 何の助走も踏み込みも無しに、翼があるかのごとく二メートル弱も飛翔。 斗貴子の頭上を飛び越え、後ろの無力な一般人から仕留める為。 そうはさせじと、斗貴子もまた飛んでいた。 ガキキン! ――ぱららっ どごっ 神速の影が二つ、空中で交錯した。 激突音は鈍く響き、火花ではなく血霧を散らして両者は着地。 カノンの覆面の、両眼にあいた穴からじわりと血がにじむ 右手の人差し指と中指を返り血でしめらせたのは守り手の斗貴子。 彼女もまた、代償として受けた左手の痛みに歯を食いしばる。 「強引に押し通ろうとしたら、眼突きを狙って来るとはね」 「人の腕を足場にして回避した奴が何を」 二つのモーターギアは、銃口の妨害と少年への囮として、懐に飛び込む為だけに使われた。 斗貴子の二つの指は、少年の装甲に守られていない、面頬の中の眼球を狙った。 しかし少年は、斗貴子への蹴りによって空中で方向転換を果たしてみせた。 少年の蹴りは重かった。直撃は避けたにも関わらず、腕の骨がみしりと軋んだ。 背後から、ばたばたと二人が逃走する足音が聞こえた。 斗貴子はほっと息を吐く。腕をひとつやられたが、収穫はあった。 サブマシンガンの射程は短い。あとは斗貴子がこの防衛ラインを維持すれば、二人の命は安全圏にある。 「なるほど、ここには相当の手練れもいるということだね。じゃあこういうのはどうかな」 敵が再び飛ぶ。 同じ手が二度通用するものかと、斗貴子は再びモーターギアを射出し、跳躍。 しかし、サブマシンガンの銃身は、斗貴子の予測した位置を逸れた。 敵はサブマシンガンを、後方に振りかぶっていた。モーターギアがかわされる。 投げた。 約3キロのマシンガンにあるまじき弾速が、ギュオと風を切る。 しかし狙いは粗い。斗貴子は空中で首をずらして軽くかわす。 あり得ない攻撃だ。回避はそれほど困難でない上に、銃を失うデメリットは大きすぎる。 斗貴子はかわされたギアを空中でキャッチして改めて丸腰のカノンを―― ――――ぐしゃり 小さな音だった。 それにも関わらず、とても不吉な音だった。 何かが、潰れたような、めり込んだような、 あり得ない。と再び思う。 否定したかった。 十数メートル先を走っていた相手に向かってサブマシンガンを投擲して、その相手の『頭蓋を叩き割る』などという真似が、人間の握力でできるはずがない。 ――しかし、マシンガンを投擲したあの腕力、あの驚異的な投擲の速度を生みだせる人間なら? 少女の悲鳴が、その『あり得ない』を否定した。 「新八さん!? 新八さんっ!?」 度を失った悲鳴。 振り返る余裕などなかった。いや、正直、振り返ることが恐ろしかった。 しかし、その絶望的な叫び声からは、『ぐしゃり』で何かが起こったことは明白で――。 (そんな――) 回避したせいで、一人、死なせた。 戦士斗貴子にとって、それはあまりに重い悔恨をもたらすもので、 「ひとつ教えてあげるよ」 その悔恨は、致命的な隙。 ※ ※ ――失敗した。 志村新八を倒した一撃に対する、カノンの評価はそれだった。 本当は、なのはを狙ったのだ。その低い位置にある頭は、カノンの滞空する角度から狙いがつけやすかったから、 しかし、志村新八はとっさに動いていた。死角の外からの完全な不意打ちに、とっさに対応した。 カノンは狩猟で培われた驚異的な動体視力から、それを確認した。 サブマシンガンは、なのはを突き飛ばした新八のうなじに突き刺さった。 結果を見れば、二人の内どちらかを攻撃して、動きさえ止めれば良かったのだから成功したと言える。 しかし、一撃で仕留め切れず、苦痛を長引かせる結果となってしまった。 (まだ迷っているのか……?) 考えられる可能性は、カノンの迷い。 無関係の『一般人を殺す』という行為に、投擲速度が鈍ったこと。 しかし、心揺らされている暇はない。眼の前の少女は、躊躇いながら倒せるほど容易い相手ではない。 「ひとつ教えてあげるよ」 凍りついた少女に、コンマ一秒で肉薄。 蹴った。 ギリギリで津村斗貴子が着地していたことはわざわいした。 完全な隙をついての一撃だったのにも関わらず、後方に飛んで受け身を取ったのだ。 「がぁっ…………!」 しかし、それでも小柄な体がたっぷり数メートルは吹き飛び、太い樹木の幹へと激突。 げほっ、と咳を吐くと、肺に衝撃を受けたらしく呼吸が止まる。 本当なら、この一撃で血を吐いて死んでいるはずだったのだが……。 「この世界に悲劇はなくならないし、 諦めを知らないのは途方もなく愚かだよ」 しかし、しばらくは起き上がれないだろう。 カノンは余裕を持って、先ほど倒した少年たちの元へと歩み寄った。 志村新八の言っていたことは、全く正しかった。 ひとたび人を殺してしまえば、取り返しはつかない。 既に何十人も殺してきたカノンは、その『取り返しのつかなさ』を誰よりも知っていた。 新八の主張は間違いなく正しい。そしてその正しさは、そのままカノンに跳ね返る。 カノン・ヒルベルトはもう取り返しのつかないところまで来ていたのだから。 イングラムの銃身が、新八のうなじ、首の皮膚にめり込んで刺さっていた。 なのはがそんな新八の体を、狂ったように揺さぶる。 「なの……ちゃ…………ニゲ……」 重要な神経を損傷したのか、その言葉はたどたどしかった。 刺さっていたイングラムを引きぬくと、その体がビクビクとけいれんする。 イングラムを1メートルの距離で照準。 こればかりは、どんなに迷っていても、撃ち損じるはずがない。 ――ぱららっ ほんのちょっとだけ引き金を搾ると、パラベラム弾が新八の頭部を破壊した。 ――『殺した』のではない。『楽にした』のだ。 カノンが殺さなくとも、いずれはほとんどの参加者が清隆の生贄となるのだから そう己に言い聞かせる。 詭弁だった。 分かっている。 たった今この瞬間から、カノン・ヒルベルトは『殺人鬼』になったのだ。 “敵”だけを殺す『ハンター』ではなく、正しい人間をも見境なく殺す『殺人鬼』に。 「新八、さん……」 なのはは凍りついた瞳で、破壊された頭部をじっと見上げている。 怒るでもなく、悲しむでもなく、ただ恐怖している。 カノン殺されると怯えているのではない。 起こったことが『理解できない』が為に恐怖しているのだ。 当たり前の反応だ。 9歳の小学生が、人の頭が撃ち抜かれる光景を見慣れているはずがない。 それ以前に、人の『死』自体さえ、そう何度も経験するほどの年端に達していない。 ――だから、せめて、その絶望を理解する前に楽にする。 カノンはイングラムの銃口を、きっちりとなのはの頭に照準した。 キュン、と風を切る音がした。 「何……?」 引き金を引く指が急激に重くなり、カノンはイングラムを再確認。 トリガーの間に、ちょうどいい大きさの小石がはさまり、イングラムの引き金を封じている 『小石を投げた誰か』が、引き金をひくことを妨害した。 「こんなもので……!?」 流石のカノンも絶句する。 こんな小さな石を投擲して、ピンポイントでトリガーの小さな隙間を狙えるとは、 いったいどういう人間なのか。 しかし驚く暇は与えられなかった。 『何か』が唸りを上げて迫り、カノンは横っ跳びに回避。 『銀色』の人影が、カノンのいた地面へと鋭い飛び蹴りを叩きこんでいた。 地面がえぐれ、銀色のコートが大きくひるがえる。 ※ ※ 「せ、戦士長!?」 気力だけで立ち上がった津村斗貴子は、現れたその姿に、まず己の眼を疑った。 全身を――顔さえも立てた襟で隙なく覆う白銀のコートに、同じく白銀のウエスタンハット。 ――防護服の武装錬金、シルバースキン。 その鎧をまとえる人間は、この世にたった一人しかいないはず。 しかし、と斗貴子は思いなおす。 支給品の核金から、バルキリースカートではなくモーターギアが呼び出されたことを。 ならばあの人間は、 「どうやら、お前は津村斗貴子の言っていた『化け物』にあたる人間らしい」 感情の読み取りずらい淡々とした声で、彼は敵に呼びかけた。 「桐山君? 何故、ここに。待機しろと言ったはず」 斗貴子は打ちつけた体を鞭打って立ち上がり、桐山の元へと走り寄る。 「やれやれ……君たちは傭兵か何かかい?」 流石のカノンもシルバースキンの異様には驚いたらしく、距離をとってマシンガンの弾倉を詰め替えている。 桐山は、コートの詰め襟の奥の瞳で、斗貴子をまっすぐ見据えた。 「俺は戦える。そして俺はこの命を、お前の言った『目的』の為に使いたい」 恐れも濁りもない。ただただ純粋な瞳だった。 (……こんなに迷いなく戦いに飛び込んでくるとは……この少年、戦士としての素質がある?) 桐山は「すまない」となのはに声をかけて志村新八の遺体から引き離し、ディパックを回収。 そして遺体が持っていた日本刀を掲げて、敵に対峙し―― 「待て」 斗貴子は右腕を出して、戦闘態勢に行こうした桐山を制止した。 蹴撃のダメージは、だいぶ癒えた。 彼ならば、この少女を預けても大丈夫だ。 それに斗貴子は、カノンの知らない支給品をまだ二つ持っている。 まだ、戦える。勝算はある。 「桐山くん……少し、キミに、興味がわいた。それでも、私は君たちがいない方が戦いやすい。 桐山君は、その少女を連れて走れ。何としても守ってほしい。 これは君を認めたからこその命令だ。それに」 チャクラムを再び指先に搭載。 「――こいつは、私の“敵”だ」 彼女を駆り立てるのは、簡単に罪のない人間を殺した、“敵”に対する憎悪。 そして、簡単に犠牲者を出してしまった己に対する激しい怒り。 「了解した」 「あ……」 桐山は命令を肯定するや否や、なのはを小脇にかかえる形で抱き上げ、シルバースキンの重装甲も苦にせず疾走した。 「感情をそのまま攻撃力に転化できるタイプか……これは少々、骨が折れそうだね」 二対一は不利と判断したのか、敵は桐山たちの逃走をそのまま見送る。 「それ以上、喋るな」 斗貴子にとって、敵とおしゃべりを交わす余地などはない。 この男は、無辜の少年を殺した。 例え殺し合いの場だとしても、殺戮を生む存在はその理由いかんを問わず、 斗貴子にとって完全な“悪”だった。 敵は、全て、殺す。 「貴様は私が、今ここでブチ撒ける!」 【Fー2/川の南岸/深夜】 【津村斗貴子@武装錬金】 [状態]左腕の骨にひび、腹部に打撲、桐山に『少し興味』 [装備]モーターギア@武装錬金 [道具]基本支給品一式、不明支給品2(武器らしい) [思考]基本・力無きもの(民間人)は保護し、化け物(殺戮者)は殺す。 1・眼の前の男を確実にブチ撒ける。 2・しかる後に桐山くんたちを追う。 3・ゲームの打倒 ※桐山和雄を、正義の心を持った人間と判断しました。 【カノン・ヒルベルト@スパイラル~推理の絆~】 [状態]まぶたを負傷(眼球に異常なし)、殺人による精神的苦痛 [装備]装甲@吸血鬼のおしごと イングラムM10サブマシンガン@バトルロワイアル [道具]基本支給品一式、予備弾倉残り4 [思考] 基本・『実験』を早く終わらせる為に殺し合いに乗る 1・目の前の女性を殺す 2・ブレード・チルドレンでなかろうと殺す。 3・アイズ、浅月、亮子はできれば直接手にかけてやりたい。 4・アイズ・ラザフォードは、殺せる機会が来るかは分からないが、殺せると思っている。 5・機会があれば、鳴海歩がミズシロ火澄を殺すように仕向ける。 ※参戦時期はスパイラル5巻、来日する直前です。 (鳴海歩とは面識がないものの顔を知っています。ミズシロ火澄とは面識があります。結崎ひよののことは完全に知りません) 「あの女の人、大丈夫かな……」 なのはは桐山に抱えられたまま、後ろを振り向こうとする。 しかし、男の右腕はなのはの体をがっちりと捕獲していて動けない。 コートの男の人は淡々と言った。 「俺は津村斗貴子から、あの場は任せてお前を保護するように指示された。 だから、俺は彼女の判断に従うしかない」 あの女の人もコートの人も、殺し合いには乗っていないようだけど、しかし襲って来た敵を迎え撃つことはちゃんとできていた。 あの場で、なのはだけが何もできなかった。 その事実が、なのはの心を軋ませる。 せめて、レイジングハートがあれば良かった。 魔法が使えれば、なのはだって、いつものように―― ――本当にそう? なのはの心にいた冷静な部分が、冷やかにそう尋ねた。 水をかけられたように、なのの温度が下がる。 ――魔法で戦ったとして、本当にあの人を止められたの? 確かに、レイジングハートがあればシールドで銃撃を防ぐことも、砲撃でカノンを打ち倒すこともできただろう。 しかし、魔法でカノンを行動不能にしたとして、その後はどうしていただろう。 説得してあのカノンを反省でもさせるつもりだったのか? あの戦いは、なのはの知る戦いではなかった。 フェイトとぶつかりあった時とは、根本から違っていたのだ。 フェイトという少女に対しては、お話がしたいと思った。 何度もぶつかって、戦ってきたけれど、寂しそうな瞳に共感し、友達になりたいと思った少女。 彼女は確かに悪いことをしていたけれど、それはそうしなければならない悲しいことがあったからであり、それを助けてあげられたらと思った。 だから、全力でぶつかりあって、そして私が勝てば、その時はお話を聞いてもらえると思った。 でも、あの時のカノンという人は違った。 言葉が通じないと、思った。 フェイトのような、悲しげな瞳ではなかった。 乾いた瞳だった。 人間の瞳をやすりにかけてボロボロに研磨したような、擦り切れた目だった。 なのはの言葉では、あの人は止まらない。 フェイトちゃんの時のように、戦ってぶつかり合えばお話を聞いてもらえるという自信が、欠片も持てない。 お話がしたいんだ、と 本来なら当たり前のように言えた、その言葉が言えない。 カノンを食い止めようとした津村斗貴子さんという女の人も、あの人を殺すつもりでいるように見えた。 あの戦いは、本当に“殺し合い”だった。 現に、新八さんが、死んだ。 なのはの魔法は非殺傷設定を搭載していて、それを解除しない限り敵を傷つけることはできない。 バインドで動けないようにしたとしても、なのはの今の技術では、殺し合いが終わるまで拘束しっぱなしにしておくことなどできない。 つまり、あの人を止めるためには、あの人を殺すしか―― できない、と思った。 人を殺す、ということを視野に入れたその瞬間、心が『できない』と言った。 なら、高町なのははこの『殺し合い』を止められない? 高町なのはは、無力でいるしかない? ――9歳の少女は、生まれて初めて覆しようのない『理不尽』を目の当たりにしていた。 【F-3/川の南岸/深夜】 【高町なのは@魔法少女リリカルなのは】 [状態]精神的ショック(大)、桐山にだっこ [装備]なし [道具]基本支給品一式、不明支給品0~1、『跳』のカード(6時間以内使用不可) [思考]基本・殺し合いには乗らない…… 1・新八さん……。 桐山和雄は、その対峙を見て、装甲の男を『化け物』、襲われた少女を『弱者』と断じた。 状況から津村斗貴子が彼と交戦したことは明白であったし、何より看過すれば少女はそのまま撃ち殺されていた。 そして、津村斗貴子の『少女を保護して逃走しろ』という命令によって確信を得た。 この少女は、津村斗貴子の定義するところの『保護すべき弱者』である。 桐山和雄は少女を抱えて走りながら、頭の中に会場の地図を描く。 津村斗貴子は合流場所を指定しなかった。 万が一にも襲撃者を取り逃がした場合、合流場所に先回りされる危険性を考えてのことだろう。 しかし、この会場には人の集まりそうな施設が幾つか配置されている。 戦闘を終えた津村斗貴子が、その内のいずれかを探索する可能性は高い。 近辺の施設は、警察署、病院、そしてコンビニ。 ……津村斗貴子は負傷していたようだし、病院に向かう可能性が高いか。 桐山はそう考え、川の上流へと駈けた。 桐山和雄には、ひとつの誤算があった。 その少女、“高町なのは”は、決して弱者ではない。 人を殺す覚悟も備わっておらず、またあったとしても現状ではそのデバイスも備えていないが、 後に『エース・オブ・エース』と呼ばれる膨大な魔力量は既に顕在。 桐山和雄の住んでいた世界の常識からすれば、充分に“化け物”と言える魔道の潜在能力を有している。 もしその事実を知った時、彼は、 【志村新八 死亡確認】 【残り65人】 【F-3/川の南岸/深夜】 【桐山和雄@バトルロワイアル】 [状態]健康 [装備]シルバースキン@武装錬金、鉄子の刀@銀魂 [道具]基本支給品一式×2、不明支給品0~2、竹田千愛のノート@〝文学少女〟シリーズ イエローの麦わら帽子@ポケットモンスターSPECIAL、テニスラケット@テニスの王子様 [思考] 基本:「力なきもの(一般人)」を保護し、「化け物(強者と判断したもの)」は殺す。 1・少女を保護しつつ、病院へ移動。 2・装甲服の男を『化け物』と認識 【竹田千愛のノート@〝文学少女〟シリーズ】 竹田千愛が己の半生を回顧して書きつづった自伝とも言えるノート。 これを読めば、彼女の気持ちが理解できるかも……。 【鉄子の刀@銀魂】 村田兄妹の妹、鉄子が鍛えた日本刀。鍔の部分にウ○コのような形のとぐろを巻いた竜が彫られている。 鉄子の願いが込められた一振りであり、紅桜と互角に渡り合う切れ味を持つ。 Back 027ログの樹海 経験の羅列 投下順で読む Next 029想いが全てを変えていくよ GAME START 志村新八 GAME OVER GAME START 高町なのは next [[]] Back 020黒い天使 カノン・ヒルベルト Next [[]] Back 003想いは 正しく伝わらない 津村斗貴子 Next [[]] Back 003想いは 正しく伝わらない 桐山和雄 Next [[]]